【疑問】生活習慣病と骨粗鬆症



お仕事整形外科医です。


骨粗鬆症学会誌はいつも病院の医局で、拾って読んでいます笑

今回、挟まっていた冊子に生活習慣病のことについて書かれていました。


第一三共の「糖尿病と骨粗鬆症」というタイトルの冊子でしたが、監修が産業医科大学第1内科学講座准教授 岡田洋右先生ということで、内科の先生から見た骨粗鬆症診療というすこし目線の違う感じが面白く感じました。

骨粗鬆症も関節リウマチと同じように、整形外科医が手をつけにくい領域に将来変わってくるのかしら・・・?

いや、でも、やっぱり整形外科疾患でしょ??



まとめ
  • 生活習慣病は骨質不良を引き起こすものもある
  • 脆弱性骨折がなくても骨粗鬆症治療が必要な人もいる
  • でも、骨質不良にアプローチする治療法は確立されてない(生活習慣の改善などを除く)
  •   




骨粗鬆症治療の復習

日常診療では、脆弱性骨折があれば基本的には薬物治療の対象になります。

実際には、

  • 脆弱性骨折が大腿骨近位部または椎体骨折の場合はそれだけで骨粗鬆症の薬物治療対象
  • 脆弱性骨折がそれ以外の場合には、骨密度が80%未満では骨粗鬆症の薬物治療対象

となります。

他には、脆弱性骨折がない場合には、
  • YAMが70%以下か、-2.5SD以下では、骨粗鬆症の薬物治療対象
  • YAMが70%より大きく80%未満では、大腿骨近位部骨折の家族歴・FRAX10年間の骨折確率(主要骨折)が15%以上は骨粗鬆症の薬物治療対象


とされています。

骨粗鬆症は発見されてから治療開始して骨折予防効果が見られるまで、1〜2年を要します。


そのため、早期発見が重要でありながら、重症の場合には骨折の連鎖を止められないというジレンマがあります。

骨粗鬆症の要因

骨粗鬆症を定義するものには骨密度と骨質があります。


これまでの診断基準は主に骨密度に重点を置いているものです。


しかし、特に男性の場合に、骨密度はしっかりしている脆弱性骨折に遭遇することがあります。


そもそも、骨粗鬆症の発症機序が女性のホルモンバランスの乱れと大きく異なる点もありますが、男性骨粗鬆症の場合にはその診断も「骨折が起きてから」になることがおおため、早期発見・早期治療開始とはいきにくい側面があります。

骨質悪化の原因としての生活習慣病

骨質悪化には、COPD、DM、CKDなどの疾患の関与が考えられています。


これらの基礎疾患の存在・早期発見が難しいことも合間ってかもしれませんが、男性の骨粗鬆症性脆弱性骨折の予後は一般的に女性よりも悪いと言われています。


そこで、今回紹介している「糖尿病と骨粗鬆症」には興味深い内容が書かれていました。


脆弱性骨折なし・骨密度がYAMの70%よりもおおきく80%未満の場合、2型DM,CKD、COPDで骨折リスクが高い場合には薬物治療を開始しようという提言です。


具体的には
DMでは罹患歴10年以上、HbA1cは7.5%以上、インスリン使用、閉経度女性でチアゾリジン使用例、喫煙、重症低血糖が危惧される薬物使用、転倒リスクが高い場合。

CKDではeGFR60ml/分/1.73m2未満

COPDでは病期をとわず

というのものです。(ちなみに、保険診療上は診断基準を満たさないため注意が必要であると明記されています。)


たしかに、早期に治療開始可能であり、それにより骨折の現象が期待できそうです。


一方で、骨質不良を発見するにもかかわらず、治療は結局骨密度の上昇を期待する薬物治療である点がひっかかるところです。


本来なら、骨質改善に効く薬物があればいいのですが、いまのところは私の渉猟する限りではピンときません。


理想を言えば、これらの生活習慣病の重症化や骨折リスクとリンクするような骨質マーカーが明示され、保険上認められ、骨質に効果を示すわかりやすいマーカーが今後期待されます。

まとめ

骨質については問題点が多く残されています。

骨粗鬆症の市場はまだまだ余力がありますから、製薬メーカーもこの手の治療薬を創薬していただきたいものです。

ただし、整形外科医が使える範囲の治療薬が個人的には嬉しいですwwww



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