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高齢者の頚椎頸髄損傷に対する
アプローチ

最近、医師らしい記事が少ないので、久しぶりにガチガチの医療記事を記載します。

高齢者の骨折が問題になっていますが、意外と良く見る高齢者の頸髄損傷。

治療方針としては、いまだに確立されたものはない印象が強く、施設によっては手術を積極的に行いに行くところと、そうでないところが分かれるように感じます。

今回、日本整形外科学会雑誌に、特集が組まれていました。

参考文献
日本整形外科学会雑誌 93巻 10号

骨傷のない頸髄損傷

欧米諸国では頻度が少ないと言われている頸髄損傷ですが、日本では7割が骨傷のない頸髄損傷とその頻度に大きな乖離があるようです。

元来、日本ではOPLL患者数が多いという違いもあります。

実臨床でも感じられるように、OPLLがある人が軽微な外傷によって非骨傷性の頸髄損傷になることが多いと考えられています。一方で、もともとOPLLを持っていることを知っていた人は、OPLL+頸髄損傷の人の1/4に過ぎなかったというデータがありました。

確かに、実臨床でも、ご自身がOPLLをお持ちとしらないパターンが多いように感じます。

さらに、OPLLの人に転倒注意を促して前向きに研究した結果では、全体の2%のみが頸髄損傷に至ったという論文があるそうです。

この論文では予防が可能と結論づけられているようですが、私も精査していないため何ともいえませんが、OPLLの人を検診で捕まえて、前向きに注意を促した群とそうでない群を追ったものでないとすると、OPLLの人の自然経過との比較ができていないため、必ずしも予防可能という結論には至らない可能性があります。

なにより、注意を促すといっても、人によって受け止め方は異なるでしょうし、ずっと「気をつけろ」と言われて生活するのも大変なものなので、この結果をどう捉えるかは難しいところです。

一方、高齢者の頸髄損傷に対して大量ステロイド療法はデメリットが多く、行わないというのはコンセンサスがありそうです。

高齢者の歯突起骨折

高齢者の歯突起骨折も増加しています。

歯突起骨折はAnderson分類が使用されることが多く使用されます。

  1. 歯突起先端の骨折
  2. 歯突起基部の骨折
  3. 歯突起から椎体にかけての骨折
1.3は保存治療で癒合が期待できます。2は、偽関節の症例も多く、手術にすると、保存にするか迷うところです。

若年であれば、迷わず手術でしょうが、ご高齢者の場合の治療方針にはコンセンサスがありません。

以前は高齢者にもハローベストが使用されていましたが、近年は管理の面からも硬性カラーが多いように感じますし、実際そうだと思います。

保存の場合、3ヶ月前後の装具使用になります。

頚椎の変性が強いとtype 2になりやすいようで、高齢者に多いのはtype2とも考えられます。

これまでの、論文では、
80歳以上のtype2では手術治療群は保存治療群に比べて嚥下障害、誤嚥のイベント、気管切開の発生頻度が有意に高い

とされています。

手術治療の方が呼吸器系のイベントが多いとなると考えものです。

一方で、別のシステマティックレビュー論文では
60歳以上の検討では死亡率は手術群が有意に低い。合併症については有意差がなかった。

という、論文もあるようです。しかし、この論文は、レビューした論文の質の低さを指摘しているようで、真相は闇という印象です。

完全に健康に過ごすために必要とされる医療費

今回の特集でもう一つ驚いたのが、この部分でした。

完全に健康に過ごした1年のために、必要とされる費用をICER(増分費用効果比)というようで、 ICERがおよそ5万ドル程度であれば社会的に受容されるとされる論文が多いそうです。

医療費の問題が大きくなる中、費用対効果という考えも必要になってきます。

その線引きをどこでするかというのは、その国の経済状況にもよると思います。

もしかしたら、治療を受ける人間にもよるとされる時代がくるかもしれません。

そのなかで一つの線引きが5万ドルであることに驚きました。

どう言った観点からここに落ち着いたのかはわかりませんが、非常に興味深い数字です。

しかし、ICERを算出する際には、仮定が多く使用されるようで、信ぴょう性は乏しいと言った印象です。

まとめ

この特集の最後に、筆者の私見が書いてありました。

短的にいうと、

  • 85歳以上などの超高齢者では保存も手段
  • 65歳以上でも活動性が高い場合には若年と同じ治療方針

という内容でした。

エビデンスが確立していない以上、私見を述べるしかありませんが、その道のプロの私見は現段階での治療指針になりうると考えています。


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