骨折治療から見た
グループホームの問題点

お仕事整形外科医です。


グループホームというご高齢者のお住まいがあります。

グループホーム(認知症共同生活介護)
主治医より「認知症」の診断がある要介護高齢者が1ユニット9名を基準として、施設に入居し、生活に必要な身体介助や生活援助を受けて共同で生活する施設
要は、認知症の方同士が援助を受けながら共同生活を行う住まいです。

急性期病院の経験しかない医師はどうしても、老人ホームというくくりのみで、それ以上のこまかな制度にまでその知見を深めません。

忙しい診療の中で、そこまで目を向けることができないのも当然なのですが、「施設から来たのだから、施設にそのまま帰せや!」という、半ば乱暴な采配を行う人が多いようにも感じます。

一方で、介護保険の範疇になるグループホームは、特性上いくつかの問題点を抱えています。

空室にできる時間に限りがある

グループホームなど介護施設を運営する母体は、医療系とことなり株式会社であることも多々あります。

株式会社である以上、営利を求めることが目的になります。

営利を求める以上、共同生活の場であるグループホーム入所中の方が、もし入院された場合、空室を作ってしまうと、損失につながることになります。

なので、施設によっては、空室期間に制限を設けて、あまりにも長い空室になるようなら、退去とせざるを得ない側面があります。

もし、退去させられてしまうと、本人の住まいがなくなるため、本人も家族も困ることになります。

そのため、早期に退院させて、施設にも取ってきてもらわないといけないというジレンマがあります。

例えば、骨折で入院された場合、骨折後のリハビリ時間を十分に取れず、回復期を経由せずに施設に帰さざるを得ないということも生じます。

施設は病院ではないので、リハビリが十分に行えません。術後の特殊なリハビリはとくにできません。

その点で、短期間でグループホームに戻られる際には、回復期を経由するよりもADLの改善が得られにくい環境にあると言えます。

ちなみに、私個人の意見ですが、株式会社である以上、冷たいと言われても、空室期間に制限を設けるのは仕方がないと思います。

我々医療者は、ともすれば利益をある程度害しても、患者にベストなことをすべきと考えますが、目の前の患者さんのために、他の方にもご迷惑がかかるような状況を安易に作ってはいけません。

グループホームは地域の方々のなかで、将来にわたり、もし認知症になっても生活できる場所があるという安心にもなっていますし、現在入所されている方も、企業が継続的に事業を行えていることで住む場所を提供してもらっているため、事業の継続性はマストです。

逆に言えば企業は、その継続性を担保することで役割を果たしているともいえますから、「仕方がないこと」と表現させていただきました。

グループホームでは十分なリハビリを受ける機会はすくない

グループホームは、人員配置基準として看護師の配置が義務ではありませんが、医療ニーズの拡大から、配置している事業所もあります。

他にも、外部に訪問看護を委託し、医療ニーズを満たそうとしている事業所も散見されます。


しかし、看護師はリハのしっかりとした教育を受けているわけではありません。

ですので、施設看護師に、術後リハビリを依頼することはほとんどの状況で実質不可能です。

すこし知識のある方ですと、訪問リハビリを入れればいいのでは?という指摘を受けるかもしれまえんが、グループホームは介護保険が丸め(包括)であるため、訪問リハビリで介護保険を利用することができません。

全て自費なら、行うことはできますが、週に2,3回。3ヶ月入れようとすると莫大な金額になります。

唯一できるのは、医療保険による訪問リハですが、この場合、特別訪問看護指示書が必要になります。

特別訪問看護指示書にはいくつかの決まりがあり、純粋に骨折して手術して退院してきただけの場合には、退院後早期の14日間の特別訪問看護指示書の作成ということになると思います。

それでも、14日間のみです。

整形外科医なら、これがかなり厳しい日数であることはわかっていただけると思います。

まとめ

グループホームという”くくり”が作られた当初は、これほどまでにグループホームで医療ニーズが増えるという想定はされていなかったという話も耳にします。


地域連携の重要性がさけばれ、入院期間の短縮がすすむなか、すべての医師に介護保険への理解はマストであると考えています。


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