骨盤矯正?からアライメントを考える

まちなかの広告でよく見る骨盤矯正。

「姿勢が改善する!」「ばあちゃんの腰がのびた!」など、様々な宣伝文句があふれています。

整形外科医から見た、ご高齢者の骨盤矯正・姿勢矯正について見解を述べたいと思います。

アライメント異常は骨盤のみが原因ではない

ご高齢者の場合、sagital(横から見た)アライメント不良は骨盤のみが原因ではありません。

パッと思いつくだけでも、

  1. 脊椎アライメント不良
  2. 仙腸関節症
  3. 股関節可動域
  4. 膝関節可動域
  5. 足部障害
など。

その要因は多様であり、複合的に起きている場合には、その基となった疾患をあぶり出すのはほぼ困難です。

このような状況の中、骨盤のアライメントのみを矯正しても、効果が薄いことは明白です。

例えば、膝関節の伸展制限・骨盤後傾・腰椎後弯が生じている場合に、骨盤のみ前傾に無理やり戻しても、膝が伸びないと後方に転びやすくなるため、写真としてスペシャルなものを撮影できても、一歩歩き出すと元に戻ります。

施術者の前や鏡の前で止まっているときはしっかり背筋が伸びても、帰る頃には元どおり、また姿勢が悪くなったから施術してもらうという、ループにハマる可能性があります。

骨性の変形が強い場合に姿勢矯正は難しい

圧迫骨折などで、椎体圧潰からアライメント不良が生じている場合には、いくら外からアクセスしても改善は困難です。

手術的に矯正することもありますが、手術侵襲が大きくご高齢者の場合には、前傾が強く、逆流性食道炎がひどく食事が食べられない・呼吸障害を生じているなど、余程の理由がないと適応になりにくいのが現状です。

では、どうするのか?既に完成している椎体の圧潰については、体感筋力をつけることである程度効果を見込めますが限定的であるというのも確かです。

やはり一番は「予防できるものは、予防する」に、つきます。

骨粗鬆症を早期に捕まえ、治療を開始することが肝要です。

その理由は、

  • 骨粗鬆症治療は効果が出るまで1年前後はかかる
  • 骨折の連鎖は1年以内に生じる
ためです。

ADLに直結するような重症圧迫骨折や、大腿骨近位部骨折はその前に、不顕性圧迫骨折や橈骨遠位端を経験されている人がおられますので、その時点で捕まえてあげるべきです。

その意識をもって、診療することで骨粗鬆症への治療介入率は大きく変わると思います。

まとめ

医師は医療の不確実性を熟知しているが故、発信力が弱く、医療において、とんでもな情報がながれがちです。

医師側も十分な知識をもって、患者さんからの相談に答える必要があります。


コメントをどうぞ


    メールアドレスが公開されることはありません。*印が付いているものは必須です。