お仕事整形外科医です。
近年の医療は専門性の高く・細分化が進みました。
他方、細分化は病院内や医局内の患者さんたらい回しを生み出すなど、許容できない問題点をはらんでいます。
ある症例は、
(紹介時はHipの痛みが強いため、Hipの専門家へ紹介される)
先にTHA施行。
退院後、腰痛が続いたため、患者さんが外来で主治医に相談すると、
「クリニックに一回もどって再度、当院に紹介してもらえ」とのご指示。
患者さんも、診察室が隣にいる先生が脊椎の先生と知っている状態で、矛盾を感じながらクリニック受診。
クリニックから、再度総合病院へ紹介
そっちのつごーだろってかんじだとおもうぜ。
しかし、知識の幅が狭いのに、周囲に相談できない医師(この記事では「専門すぎDr」と呼びます)は、今後の仕事面での選択肢を減らしているようにも感じます。
- 狭い専門分野だけで勝負できる医師は、将来もっと一握りになる?
- 専門すぎDrは、選択肢を狭めている?
- 専門分野」を持ちつつも、身に付けたいスキル(個人の感想)
高い専門性は、メリットもあるが「狭き門」
専門であることのメリットは、高い知識や技術によりその病院や地域で、”なくてはならない存在”になることです。
ともすれば、給与面や処遇面で優遇される可能性もあり、自身の存在意義を感じることも可能です。
専門性の高い先生をたよって、患者さんを集めることができれば病院の収益も上がり、より重宝されます。
しかし、ここまでに至るには、「本当に一握りの医師」になる必要があります。
さらに、近い将来、患者さん自身が、ネットなどを駆使して情報を手に入れ、簡単に県を跨いで利用機関を選択するようになるかもしれません。
また、ネットなどで情報が簡単に手に入り、さらに真偽を疑うようなものまでが錯綜している現代において、「技術があっても、発信力がないと集患につながらない」可能性も出てきます。
これまでの、「技術があれば自ずと、モノが売れる」といった、昔の職人的発想では、本当に必要な医療によって患者さんを救うことはできませんし、ともすれば、間違った方向に導かれていく可能性もあります。
このように、「発信力」も必要な時代になってくることもあり、患者さんにむけた「セルフブランディング」が必要になります。
「専門すぎDr」であることのリスク
高い専門性を発揮するには、ある程度の「医療施設やスタッフ」が必要になる場合があります。
この点においても、医局人事に勤務先を左右されることが多い医師は、みなさんもご存知の、「つまらない理由」によって専門性を活かすことができなくなることも生じ得ます。
医局に所属していなくても、ライフステージが変わることもあります。
他の働き先を探そうにも、自分が持っている専門性がすぐに活かされるとは考えにくいです。
また、先ほどお話ししたように、医療施設・スタッフの関係から、勤務先もかなり限定されたものになってしまうため、専門性にこだわりすぎると、とくに田舎では働き口の数が減るという面も否めません。
また、今回のコロナウイルスのような想定外の外的な要因で、専門性が発揮できなくなる事態もあります。
実際、整形外科の手術は、緊急性の低いものについては控えるような風潮もありました。
専門性の高い手術のみを自身の「identity」としていた場合には、「メスの取り上げ、米国なら解雇」の可能性がってあるんです。
まとめますと、
- 人事異動
- 勤務先の施設・スタッフの問題
- ライフステージの変化
- その他の外的要因
素晴らしい生き方であり、尊敬に値します。
しかし、専門性の高い先生のなかに、井の中の蛙でふんぞり返り、幅広く整形外科を知っている医師を小馬鹿にする先生には否定的です。
私が知る中では、「本当に専門性が高く、日本で有数と言われる先生」は、幅広い知識をお持ちの方が多く、他の先生を小馬鹿にするような言い方はされないように感じます。
もし、自分がほんの一握りの医師になれないと感じたのであれば、
- 専門性を高めながらも、最低限自身の科についての知識を幅広くアップデート
- 人間としての魅力を磨き、コミュニケーション能力やホスピタリティも身につける
- つねに学ぶ意識を持ち、自分のできないことを知り、相談できる人間性
が、自分の可能性を狭めない方法になるのではないかと思います。
まとめ
若手の先生方がすぐに専門分野に行きたがることへの警笛を、著名な先生方も鳴らされています。
やはり、整形外科医としてのベースの知識をつけることの重要性や、新しいことを思いつくときに、他分野からヒントをもらう事がある点を指摘されておられる方が多いように感じますが、キャリア、働き方という面においても、まず幅広く学ぶ事は重要ではないかと考えます。
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