【お勉強】外反陥入型の大腿骨頸部骨折を整復して固定するべきか? 



お仕事整形外科医です。


大腿骨頸部骨折で有名のは、Garden分類ですが、すこし前からGarden分類の限界が言われています。

分類不能例が存在することや、側面像が分類に含まれていないことなどが挙げられ、主要論文でも、「stableとunstableという分類にしかしまへんデー」と明確に公表しているところがあります。

さて、私が整形外科医になりたての頃は、大腿骨頸部骨折GardenⅠ型(結局Garden使いますww)は、「整復せずにそのまま内固定した方が成績がいい」、「栄養血管の破綻に繋がりうるので、整復はむしろしない方がいい」という意見まであったように記憶しています。

近年は、その概念が大きく変わってきているようなので紹介します。

参考
外反陥入した大腿骨頚部骨折に対し, 非整復法と非観血的整復法(MICRIF 法)による術後筋力の比較
野田ら,骨折 42(4)1218‒1221,2020

外反陥入も整復ありきになるのかな・・?

整復の詳細については、参考論文を直接参照ください
ここでは、どうして整復したほうがいいと言われ始めているか?に着目しています。

まとめ
  • 旧来の整復対する考え方
  • むしろ、整復することで期待できること





旧来の外反陥入型の大腿骨頸部骨折に対する整復の考え方

先ほどもお話ししたように、旧来は整復することはむしろ「悪」とされていました。

整復することで、骨折部の不安定化、骨頭への栄養血管の破綻を助長すると考えられていたためです。

しかし、個人的にも外反陥入型のなかに、疼痛が遷延する症例や、比較的合併する転位として多い、後捻症例で歩様や疼痛をともなう可動域制限が残存する症例(特に比較的若年例)に遭遇することがありました。

そのため、これまでの論調としては、むしろ後捻例は骨接合の対象外なのでは?という意見もあったほどです。

整復することのメリット

今回参考にした文献の孫引きになりますが、整復せずに外反変形を残したままでの固定は、

  • 骨頭に対する中殿筋のモーメントが低下
  • 外転筋力は低下する
  • 力学的な問 題により生じた筋力低下は,時間が経過しても持 続する


が、生じるようです。

たしかに、股関節の人工関節でもいわれるように、オフセットが低下すると筋力に問題が生じ、歩容が悪くなります。

外反変形は骨頭中心から中臀筋の付着部である、大腿骨転子部へのオフセット低下を招くため、予想できうる合併症です。(完全に言われてみれば・・・ですが。)

参考文献
大腿骨頸 部骨折に対する
人工骨頭置換術と観血的骨接合 術の術後下肢筋力についての比較検討.
黒田ら 骨折 2017;39(3):637‒640.

今回、この記事で参考にした、野田らの文献では、「整復することで、外転筋力低下が防げる」というのが主な結論でした。

これまで行ってこなかった整復をあえて、「する」には、デメリットがないことを証明することも大事ですが、アウトカムとしてのメリットが必要です。

それは、術者が’なんとなくレントゲンがかっこいいから’ではなく、機能面や疼痛の残存面においてどうか?という問題が非常に重要になります。


今回は、その意味でこれから整復を行っていく理由を示してくれる、いい論文でした。





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