【カットアウトだけじゃない!】大腿骨転子部骨折の「過度の」スライディング問題

お仕事整形外科医です。


大腿骨転子部骨折は、非常に頻度が高いにもかかわらず話題に事欠かない分野です。


使用されるインプラントとしてはCHSタイプとSFNタイプに大きく分かれると思いますが、いずれの場合にも問題になるのは術後のovertelescoping(過度のスライディング)です。


overtelescoping(滑りすぎること)が抱える問題は、カットアウトだけだと思っている人はおられませんか?


「10mm以上滑らなければ、20mm以上滑らなければ・・・」と考えておられる先生には、是非この記事を読んでもらえると幸いです。


そもそも、転子部骨折では、骨片間の圧迫を促すためにラグスクリューがスライディングするようにしていることが多いと思います。


しかし、骨片間の接触が悪い場合に、圧迫が加わらずにそのまま頚部の短縮を起こしてしまうのが過度のスライディングにつながります。


では、スライディングを生じさせないとどうなるか?


おそらく、高齢者の脆弱な骨では、ラグスクリューに骨頭が負けてカットアウトしていきます。

え?カットアウトしなければいいんじゃないの??

そーゆー問題だけではなぁぁい。



参考文献
Paul O et al. J Orthop Trauma. 26(3): 148-154,2012
Yoo JH et al. Orthopedics.37(12)e1101-e1107.2014
Gordon M et al. Int Orthop. 40: 799-806. 2016
Gausden EB et al. J Orthop Trauma .32(11) 554-558.2018
この記事の内容まとめ
      
  1. スライディングによる頚部短縮は外転筋力低下・歩行能力低下につながる
  2.   
  3. 疼痛に残存にも影響がある
  4.   
  5. カットアウトしなければいいってもんではない



外転筋力低下・歩行機能低下

カットアウトしなくても、「スライディングは頚部短縮が生じるためにfemoral offsetが減少するため、中殿筋のレバーあーむが低下し歩行機能が低下する」という報告があります。


たしかに、BHAやTHAの手術でオフセット気にしているように、転子部骨折でもオフセット減少は歩行機能低下につながるようです。


特に、骨折などの疾患がなくても筋力低下から歩行機能低下をきたす高齢者にとっても許容しにくい問題です。

いたみは?

疼痛残存についても、「スライディング量が1cm(10mm)増加するごとに代替外側部の疼痛リスクは4.5倍に増加する」と報告されています。


また、Harris Hip Scoreも14.2点減少するようで、骨癒合の問題以外にも10mm以上のスライディングは避けるべき理由があるようです。

スライディングの許容量は?

では、許容量はどこにあるのか?という問題ですが、こちらは一定の見解はなさそうです。


8mm以上短縮すると歩行リズムが変化し歩行能力に影響するという報告もありますが、全体としてコントラバーシャルです。


個人的には、slidingを「長さ」だけで評価するなら、術中にコンプレッションをかけているかどうかにもよって、術後のスライディング量の評価も変わると思いますし(なので、論文によっては頚部長で考えているものもあるようです)、意図的なslidingかどうか?にもよると思います。


術中のコンプレッションに対しては、私はどちらかというと「肯定的」で、整復したのに、術後に意図しない回旋を起こして整復位が乱れるくらいなら、術中にまっすぐ引き寄せてコンタクトさせておくのも手段なのではないか?と考えています。

まとめ

少なくとも、「カットアウトしなければスライディングは影響なし」は、間違いのようです。


確かに、実臨床でもスライディング量が多い人は疼痛残存が多い印象を受けます。


術後にスライディングを防ぐ方法がはっきりしない(免荷すれば防げるとも言えない)以上、術中の整復に充分注意する必要があります。





新着記事

【保険診療の溝】非定型大腿骨骨折にPTH使用は激ムズ 【緊急提言】エルデカルシトールおよびアルファカルシドール供給不足に伴う骨粗鬆症患者への対応 【アクションカム】GoPro最強説はわかる。でも、コスパが・・そんな時の選択肢



コメントをどうぞ

    メールアドレスが公開されることはありません。*印が付いているものは必須です。