【連投】橈骨遠位端骨折に最低限必要な術前計画と術中整復手技

お仕事整形外科医です。


大腿骨転子部骨折に引き続き、整形外科ネタの連投です。

お?ついに仕事が減ってきたか?

現在の騒動の最中、整形外科医として発信できることを考えると、知識を共有することくらいかな?と思ってね
役立たずwww


橈骨遠位端骨折は、骨折型が多様です。


今回は一般的な・頻度の多い骨折に対する私の考え方を書きます。


ここでの橈骨遠位端骨折は、
  • 関節内の粉砕はあっても軽度で、陥没している箇所はなく関節内アライメントはレントゲン上良好
  • 橈骨遠位部のみに限局している骨折(骨幹部へ骨折線は伸びていない)
  • 背側骨片は無視できるもの
  • 遠位設置プレートは不要なもの
この定義でいきます。


関節内の粉砕は、キルシュナーで骨片を細かくとめてCをBもしくはAtypeにしてやっていくことになりますが、ここでは細かくは触れません。また、こだわる先生方は関節鏡を用いたりもされます。


また、掌側Burton骨折については、ややアプローチ方法が異なるので、最後の方で触れます。(特にことわりがなければ掌側Burtonの話ではないと考えて下さい)

まっ、よく見る橈骨遠位端骨折ってことだな

適応についてもここでは触れません。





術前計画と実際の整復手技

まずは、私がこの記事で前提としてお話ししている橈骨遠位端骨折かを確認する必要があります。


よくいう、分水嶺(watershed line)の遠位にのみ骨折線が集中しているような骨折型ですと対応は通常と大きく異なります。


インプラントは、いくつか種類がありますが(angle fix・angle flexible Lockingなど)ここでは割愛しますが、個人的には解剖学的整復位にもどしてインプラント設置するんだし、角度が触れるロッキングにする意味合いは感じない。(めんどくささや、偽ロックの危険性などデメリットが勝る)


骨幹部まで長く骨折線が伸びている場合には、extensionつきか、初めからある程度の長さのあるインプラントを注文しておく。(長さに応じて、近位の展開の知識が必要になるので予習必要)


ここからは、この記事で定義している、「よく見る橈骨遠位端骨折」の手術治療のために必要な術前計画です。


関節内に骨折線が及んでいても、局所的なdepression骨片はないことが多く関節適合性は良好なことがほとんどです。


その場合、私の場合は(いいか悪いかはわかりませんが)RI・tilt・短縮を取りに行く整復のみ行っています。


チェックポイントは

  • 橈骨の遠位骨片の橈側近位部(下図の①部)に粉砕がないか?
  • 橈骨の近位骨片の橈側遠位部(下図の②部)に粉砕がないか?
  • 骨ぺらっぺらではないか?
です。
おい、ここにきて突然手書きのきたねー絵が出てきたぞwww

こおまえこそ、こんな記事の途中で出てくんな!やれるところまでこれやるんや。

この①、②の部分はintraforcal pinning(カパンディー法と言う人もいます)で整復するときのキーの骨片となります。



ここの粉砕が強いと、整復時のテコの土台がないことになりますので、すこし手を変えることになります。


ちなみに、整復のために骨折部にキルシュナーをいれますが、私は1.8か2.0mmを使用しています。


細いと負けますし、太すぎると骨が割れてしまいそうで怖いです。経皮的にいれてます。


骨折部に入れるときは、パワーは使わずに、手でさぐっていれてます。 そのままキルシュナーを遠位側にぐいっと持ち上げて整復して、手で差し込みます。


橈骨の反対側の皮質までキルシュナーあてたら、皮質を乗り越えるためにはじめてここで、パワーを使います。(下記の図の緑の皮質抜くときにはじめてパワーを使います)

また、あまりにも側面像で近位骨片と遠位骨片の距離が遠い場合には、すこし徒手的に整復しながらキルシュナーをいれます。


しかし、徒手牽引があまりにつよいと骨折部にキルシュナーを入れにくくなるため注意が必要です。


またこのとき、tiltが背側に大きく落ち込んでいる症例では、やや背側から掌側に起こしてくるイメージで整復するといいと思います。


私は結構ビビリなので、さらに1.8くらいのキルシュナーを茎状突起から入れて仮固定しています。

tiltをさらに戻すcondylar stabilizing法

このままではtiltの不足が残りやすいので、condylar stabilizing法を併用します。


condylar stabilizing法するときにも、ある程度整復位が出来上がっている状態でないとうまくできませんので、前述までの整復は必須です。


condylar stabilizing法は先に遠位骨片とプレートの固定をします。


この時点で、プレートが遠位にいきすぎていないか?(watershed line問題)と、プレートのML方向(橈尺側方向)などの設置場所が決まります。


最遠位のキルシュナーとプレートの仮固定を2本して、設置場所が決まれば最遠位からロッキングスクリュー固定します。


この際にプレートが骨から大きく浮いていないかの確認が必要です。


遠位骨片からプレートが浮いていると腱損傷の原因にもなりますし、のちにcondylar stabilizing法でプレートの形に骨を合わせにいく整復のときに、整復不良になります。


私は、エイヒなどでプレートを骨に押し付けながらロッキングスクリュー固定しています。(ロッキングスクリューは引き寄せ効果はありませんので、この注意点が必要なのです。)


このまま最遠位のロッキングスクリューをすべていれたら、それ以外の遠位のスクリューホールは入れずに、次に近位にいきます。実は、遠位骨片のスクリューはこの時点で全て入れてもいいのですが、私はビビリなので、あとからもう一回戻るかもしれない、そのときに骨が穴だらけになっていたら困ると考えているので、最遠位のみを基本としています。


ですが、骨折型や骨の弱さによっては、先に遠位骨片に多めにスクリューをいれておいたほうがいいこともあります。

condylar stabilizing法での、近位のとめかた

condylar stabilizing法での近位骨片へのスクリュー固定は、コーチカルスクリューでプレートと骨を寄せるところからスタートになります。


しかし、その前段階の準備として、まずは手でプレートを近位の骨に押し付けて完成型をイメージしてください。(術中透視で確認してください)


tiltがしっかり戻っていて整復位、プレートの向きがよければOKです。


いきなり、ドリルで穴開けてネジ入れてから、「あれ?」はつらいものがあります。


もう一点の注意点は、プレートと近位骨片のML方向(橈尺側方向)の関係性です。


実は、プレートを骨に寄せるときにそのまま近位骨片にコーチカルスクリュー入れると、意外と骨とプレートのML方向の関係性が悪くなる時があります。


ドリル・スクリューの向きがすこしでもML方向にふれてしまうと、そっち向きにプレートが引きよってしまうことになりプレートと骨の軸がズレます。


ドリル、スクリューの向きが骨に対して直角ではないのが原因なのですが、それを防ぐためには、近位骨片とプレートのML方向をきめて、事前にキルシュナーでプレートと近位骨片を仮固定することが大事です。


このキルシュナー挿入のタイミングは、先ほど手で近位骨片とプレートを寄せて完成型をイメージしたときです。


これを入れておくと多少ドリルの向きがML方向にふれても、軸がぶれずにプレートが骨にきれいに寄っていきます。


このpit holeと対処テクニックはいろんなところで使いますので覚えておくといいと思います。


まとめますと、

  1. 骨折部からintrafocal pinningのように整復固定(必要なら茎状突起からキルシュナー固定追加)
  2. 遠位骨片とプレートをロッキングスクリューで固定(プレートと遠位骨片の間にgapできないように注意)
  3. 近位骨片で引き寄せする前に手でプレートと近位骨片寄せて、完成図をイメージ。このときキルシュナーで近位骨片とプレートの時期を決める
  4. 近位コーチカルスクリューで寄せる
あとは、のこったスクリューホールを適宜固定して行ってください。

まとめ

文章中に出てきた、①と②骨片がわれていて、intrafocal pinnigが聞かない場合の整復方法と掌側Burtonについてはまた他の記事で書きます。


ちょっと疲れましたので、今日はここまで。。。




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