お仕事整形外科医です。
骨粗鬆症治療薬として、3月に日本で発売されたイベニティですが、市販後調査にて心血管イベントについての事象発現についての警告の項を新設したとのことでした。
既存の骨粗鬆症治療薬よりも比較的早期に、作用発現が期待できる薬として期待していただけに、警告については、使用を控える方向に、向いてしまわざるを得ないものでした。
骨形成促進と骨吸収抑制両方に効果が期待できる
まずは、簡単な紹介から。
イベニティはプラリア同様、bio製剤。
特徴は
- 骨吸収抑制
- 骨形成促進
- 従来品より早期の効果発現が期待される
また、使いやすさの面においても、
- 月一回
- 皮下注射
- 腎機能障害の方でも過度に心配する必要はない(電解質は観察する必要はある)
ただ、皮下注射をなぜか2回しなくてはいけないという、患者さん側からすれば2倍痛いだけのデメリットが存在します。
担当者に聞くと一回の使用量が多いため、局所疼痛・局所合併症をへらすためとのこでしたが、打つ側も、打たれる側も2回はストレスであることには変わりありません。
また、処方する側のpit holeとしては、注射製剤を2Aにしないと、コストのとりそびれにつながります。
1Aが高額なため、コストの取りっぱぐれは打撃が大きいです。
高額
高額であり、経済的な理由によるドロップアウトも経験しました。
もともと、月1回製剤のボンビバを使用していた人との相性が良いかと考えスイッチをしていたのですが、患者さん側から急に高額になったと文句を言われることもありました。
確かに、ボンビバの薬価は1本4729円、イベニティは1本2万4720円を1回2本ですので、1回で5万円近くになります。
ご高齢者の方が2割負担だと仮定しても、薬価ベースのみで、ボンビバは1000円前後に対してイベニティは10000円前後と約10倍近い料金になります。
市販後調査での心血管イベント
市販後、心臓血管イベントによる重篤は副作用の報告がありました。
しかし、その機序は不明。
イベニティとの関連もどこまでかははっきりしていない印象です。
イベニティを使用する対象患者層が、高齢者が多い以上、イベニティ投与にかかわらず心臓血管イベントがある一定の確率で生じるとも考えられますが、今回の調査により添付文章上に警告文がのったという、残念な感じになってしまいました。
心臓血管イベント既往がある人への投与を避けるべきとも取れるような文言であり、この状態では使用に二の足を踏まざるを得ない可能性もでてきます。
一昔前のセレコックスに似た経緯をたどっている印象もあり、いい薬剤であるが故に非常に残念です。
発熱時、体調が悪い時には使用しにくい
高齢者への使用が多いため、なんとなく体調を崩されることが多い高齢者には使用しにくい側面があります。
ちょいちょい熱を出される人もおられるため、発熱されると途端に打てなくなります。
この点も、他のbis剤と比較すると何となく免疫学的製剤であるが故か、より慎重にならざるを得ません。(これは、特に医学論文的なバックアップはなく私見です)
まとめ
骨粗鬆症治療に一石を投じる可能性のあるbio製剤だと考えています。
今後、骨粗鬆症治療薬にも多様な選択肢が生まれることで、患者さんからも、医療者再度からも歓迎される製剤が増えてくることを願います。
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