お仕事整形外科医です。
BP製剤服薬中の患者さんが歯科治療が必要になった際に、BP製剤休薬の必要性が低いことは以前お話ししました。
【保存版】顎骨壊死を懸念してビスホスホネート製剤の予防的休薬は不要!?
一方、これからBP製剤など、骨吸収抑制剤を投与開始しようと考えている患者さんへの対応については、またすこし違う考え方も必要なようです。
- 骨吸収抑制剤使用前に考える歯のこと
- 歯は大事
- 歯科治療をすすめる上で難しいところ
骨吸収抑制剤をこれから投与する人に必要な歯への配慮
先程もお伝えしたように、すでに骨吸収抑制剤を使用されている人と、これから導入を検討している人では歯科治療に対する考え方を少し変える必要があります。
「BP製剤を使用中に歯科治療を行う際に休薬する必要性はない」=「BP製剤導入時に歯科の治療を行う必要はない」では、ありません。
先に、まとめをいいますと、導入時には、
- 患者教育を十分に行う
- 感染源となりうる抜歯,歯周治療などの侵襲的歯科治療は事前に治療しておく
- その際,約2週間〜1カ月の骨治癒期間を待ってから骨吸収抑制薬の投与を開始するのが望ましい
という点です。
骨吸収抑制剤関連顎骨壊死のリスク因子に、「口腔環境が悪い」というのが以前から言われています。
この点を、可能な限り治療開始前に患者教育・治療開始(可能ならある程度の治療終了と経過観察)をしておくことが必要になります。
歯は大事
歯を含む口腔内環境は、ものを噛むという機能面のみではなく、さまざまな健康面に関与していると言われています。
肺炎、フレイル・サルコペニア、認知面などなど。
医者であれば細かくは把握していなくても、口腔内環境は全身に影響を及ぼしている!という最低限の認識は必須です。
その上で、歯科といかに連携をとっていけるか?が長期で付き合っていくことの多い、骨粗鬆症治療においてキーになってきます。
整形外科医からみた、骨吸収抑制剤導入前の歯科治療の難しさ
整形外科で骨粗鬆症を診断し、これから治療を開始するときに歯科治療を勧める上での難しさもあります。
例えば、ご高齢の無症候性椎体骨折で骨粗鬆症を診断した場合。
まずは、症状もないのに内服を始めることが一つのハードルになります。ご高齢者のなかには、背骨の曲がりは自然な老化として捉えている人もおられますのでこの時点で苦労します。
また、ご高齢者は、手指を含めた上肢全体の動かしにくさもあり、口腔内環境が見た目にも悪いことが散見されるため、その場合、歯の大切さを外来でせつせつとお話しして、歯科を受診していただくよう説明します。もともとmobilityの悪い高齢者に歯科に行ってもらうことがもう一つのハードル。
さらに、状況によっては歯科で抜歯を勧められたことに対して、「どうして症状もない病気の治療のためにに歯を抜かないといけないんだ!」と怒られることもあります。
このように、忙しい日常診療でなかなかここまで説明理解してもらえないことがあるというのも現状であり、この問題の打開策が思い浮かびません。
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