お仕事整形外科医です。
日本整形外科学会総会(JOA)2020ネタです。
がんロコモの意義 ―整形外科ががん診療にどう関わるか―
整形外科医の中には、「ガンが見たくないから整形外科医になった」という人がいるほど、なるべく遠ざかろうとする方がおられます。
実際に、私の周りでは緩和ケア研修会への参加率をあげるように言われた昨今でも整形外科医の参加の足取りはかなり重たかったように感じます。
結論からいいますと、運動器をつかさどる整形外科医が、今後ガン診療に関わることは必須になってくると考えられます。
なぜガンロコモが注目されるようになったか?
そもそも、整形外科医の役割というのは歴史的に時代のニーズとともに変化してきたようです。
戦争中は、怪我の治療。交通戦争(車社会)が生じたときは交通外傷治療。高齢社会では、高齢者脆弱性骨折治療。
昨今では、ガン罹患数が上昇し、ガンの5年生存率も上昇しています。
「Quolity of Life」という言葉はよく聞きますが、ガン罹患後の生活について「Survival of Life」という言葉もあるそうです。
ガンロコモには
- がんによるもの
- がんの治療によるもの
- がんと併存する関節疾患によるもの
1は、ガンの転移性骨腫瘍などが含まれると思います。
年間の新規転位性骨腫瘍の患者発生数が、大腿骨頚部転子部骨折の患者数にせまる数なのに対して、骨腫瘍を専門とする医師の数は非常に少なくマンパワー不足の問題が指摘されています。
実際に、転位性骨腫瘍に対しての治療に積極的に参加できている病院と、そうでない病院が存在するようで、整形外科医の数や、骨腫瘍専門医の数によって対応が変わっている現状があるようです。
一方他科を見ますと、ガン診療に積極的に関わっている科が増えているようで、整形外科の出遅れ感が懸念されていました。
ガンロコモへの取り組みが生命予後もにも影響する?
私は、全く知識がなかったのですが今回の講演の中で、「歩行できるかどうか?」がその後の患者さんのがん治療において、大きく関わるというのがとても印象的でした。
PS(performance status)と言われるそうですが、抗癌剤治療を行うかどうか?の基準に運動器の状態が含まれているようです。
そのため、歩行ができるかどうかはがん診療の方向性にも関わる重要なものであり、そこに整形外科医が積極的に介入するべきである。というのが、take home massegeの一つになっていました。
まとめ
おそらく、整形外科医の中には、転位性骨腫瘍の診療に関わるともし、手術が必要になった場合に「全身管理をどうすれば良いか?」ガンのことがわからないから、「手術で全身状態が増悪した場合にはどのように対処したら良いかわからない」など不安もあるのではないかと思います。
この不安は、「整形外科医が作った肺炎は、整形外科医がなんとかしろ!」「内科の病棟で転んだんだから骨折術後の管理は内科病棟で内科医が行え!」などという、診療科同士の不仲からもたらされる部分もあると思います。
高い専門性や、診療科の垣根を争いの元になるのではなく、連携することで整形外科医の不安を取り除くことも必要になりますし、整形外科医も協力の姿勢を示すことで、業務が楽になり、患者さんのメリットにもなるというwin-win-winの関係が構築されることが理想ではないか?と思います。
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