この記事は、2022年9月に更新しています。
お仕事整形外科医です。
骨粗鬆症の治療薬である、BP製剤などの骨吸収抑制薬使用時に歯科治療する際に顎骨壊死を懸念して、骨吸収抑制剤を中止するかどうか?が、いまだに実臨床において問題になります。
日本整形外科学会雑誌からの引用で以前下記の記事を書きました。
【保存版】顎骨壊死を懸念して骨粗鬆症治療薬の予防的休薬は不要!?
要約すると、
- 休薬期間を設けることにより、顎骨壊死が減少したと思いきや、増加した
- 休薬期間が長いほど骨折の発生も増えた
- BP製剤の使用期間と顎骨壊死について、3年前後にピークがあるが、4年以上では徐々に減少していった
- 顎骨壊死は投与前に歯科治療を行った方が明らかに低下した
「近くの中核病院では、休薬している」
と、開業医の歯科のDr.からご反論を頂いたり (この基準を明々白白と話される信念はどこに??)
他にも、
「以前のポジションペーパーでは、、、」
という、お返事を多数頂戴しております。
しまいには、大学病院の歯科の先生からも「知りません」と疑いの目で見られる始末です。
お仕事整形外科医
ええ加減にせい!隣のやり方に合わせて責任転嫁って、どんな基準で診療しとんじゃ!
ってか、2020年の感染症の件もそうだけど、学会の発信力をもっと磨く必要がありますよね・・・。
なんか、そういう仕事くれ!!
これまで、合同シンポジウムについての引用文献が、「臨床リウマチ」からのみであり、骨粗鬆症学会から発表される文献に記載されないか?と待っていたところ、ついに記載がありましたのでご報告します!
この記事の結論
- 歯科治療の前後に、BP制剤の中止は不要(むしろ害になることも)
- BP制剤の使用年数による顎骨壊死のリスクの増減はない(まだ多様な意見がある?)
- 高容量でも同じ
- 口腔内ケアは顎骨壊死のリスクを下げる
引用
The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.6 No.1 2020 p33-38
骨粗鬆症治療患者における顎骨壊死の最近の考え方 田口 明
骨粗鬆症治療患者における顎骨壊死の最近の考え方 田口 明
休薬基準の真偽と功罪
参考にした論文にも書かれていましたが、かなりつよい表現でのタイトルです。
この中では、”過去の歯科口腔外科学会のポジションペーパーの中の文言が混乱を呼んだ”とし、2018年11月のの日本骨粗鬆症学会と日本口腔外科学会との合同シンポジウムでは,抜歯前後の休薬は効果なしとされた。日本口腔外科学会は休薬なしの立場となったとしています。
引用
宗圓 聡,北川善政,梅田正博:薬が繋ぐ医科歯科連携: 骨吸収抑制薬の有効利用とMRONJ/ARONJ.
The journal of Japan Osteoporosis Society 5(2), 366-368, 2019
The journal of Japan Osteoporosis Society 5(2), 366-368, 2019
一方で、”一般の開業歯科医院では情報が伝わっておらず,いまだ休薬を求める歯科医師は多い”とも書かれており、問題の根深さを憂いておられます。
抜歯前休薬の効果は全くみられず,リスク年数も存在しなかった
日本口腔外科学会の他施設研究では、抜歯前の休薬の効果は、全くなし。リスク年数も存在しないという、これまでの意見をひっくり返すような内容です。
以前までは、やれ、「4年以上が〜」などと言われていましたが、そのデータは今となってはどこからきたもの?といった風潮です。
また、悪性腫瘍患者での高容量使用についても同様に休薬の調査をされたようですが、全く効果がないと結論しています。
まとめ
- 歯科治療の前後に、骨吸収抑制剤の中止は不要(むしろ害)
- 骨吸収抑制剤の使用年数による顎骨壊死のリスクの増減はない
- 高容量でも同じ
- 歯科医にしっかり伝わっていない
- 口腔内ケアは顎骨壊死のリスクを下げる
これら内容も今後、変革する可能性はありますが、とりあえず、今の流れは抑えておいた方が良さそうです。
追記:BP製剤使用開始前から、口腔内の環境が悪い・歯科治療中である場合には歯科の先生と相談して開始時期を決めることは必要です。
さらに追記www:デノスマブ(商品名:プラリア)については、BP製剤よりも顎骨壊死のリスクが高いことも報告されており、スイッチする場合や開始する場合には、歯科の先生との連携は欠かせません。
デノスマブは中止することで、骨折リスクがガツンと上がる懸念があるため、開始前の相談が重要です。
さらにさらに追記(2021/9)
多いな・・。
デノスマブと顎骨壊死の記事を新たに作成しましたので、参照してください。
さらにさらにさらに追記(2022/9)
むりぽ。
日本リウマチ財団のHPでは、ビスホスホネート製剤の長期使用について、下記のように示しています。
日本リウマチ財団のHPより引用
ビスフォスフォネートの投与期間が長期に及んでいたり、ステロイド投与などのリスク因子があったりする場合で、かつ歯科処置に時間的猶予がある場合には、治療前に2か月間の休薬をすることもあります。この場合、創傷治癒が完成した時点で、歯科医師の指示のもとにビスフォスフォネートを再開します。
引用元:https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm400/aronj.html#q07
引用元:https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm400/aronj.html#q07
まだまだ、議論が続いているようですね・・・。
もちろん、整形外科医も知識をアップデートしながら、歯科の先生との連携をしっかりとって、患者さんに説明していく必要があるよ!!!
医科と歯科が風通しのいい関係で、患者さんにいい医療を提供できるといいですね。
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