お仕事整形外科医です。
一般的に、骨折を含めた運動器疾患は短くいうと、舐められがちです。
患者さんのご家族からも、骨折なら命に関わらないと安心されることがあります。
また、骨粗鬆症診療も”症状がない”、”薬を飲んでいてもよくなっている気がしない”という理由で、いつのまにか中止されていることがあります。
整形外科の先生であれば、実感されるところもあるとおもいますが、なかなかデータで示さないとご理解いただけないという側面もあります。
大腿骨近位部骨折の1年後死亡率は約10〜20%
まず、ご高齢者の骨折の場合死亡するリスクがあるという説明が必須です。
そうしないと、家族は”骨折で入院なら死ぬことはないだろう”とタカをくくっている方もおられます。
大腿骨近位部骨折の1年後死亡率は10〜20%前後あり、一般的の方が想像するよりも高いと思われます。
もちろん、もともと予備能力が低いご高齢者の方が多いという問題もありますが、内科的な疾患もふくめて、運動器が寄与する部分は大きいためと考えられます。
Cooper C, et al. Am J Med 1997 ; 103(2A): 12S-19S
骨折前に外出可能であった人の手術後の状態
骨折前に外出が可能であった人が大腿骨近位部骨折を受傷し手術を受けた人のなかで、術後1年のADLが車椅子になるひとは50%前後と言われています。
骨折型・受傷前の内科疾患・認知症の有無などにもよると思われますが、数字だけをみるとそれほどいいとは言えないと感じます。
また、最近、術後リハビリを積極的に行っていた時期の最大ADLよりも1年後のADLが下がることも知られており、問題視され始めています。
[注意] 高齢者の大腿骨近位部骨折術後の歩容は、生活期で悪化しうる いずれにしても、元々できていた生活ができなくなることは、生活期において居住場所・入浴・排泄・食事含め、大きな変化が必要となります。
圧迫骨折による内科疾患の増悪
背骨が曲がると、様々な合併症が生じ得ます。
胃が圧迫されると、逆流性食道炎がおきますし、1回の食事量が減少するためサルコペニア ・フレイルのリスクも高まることが予想されます。
また、胸郭が狭まるため、肺の含気量が低下し排痰困難になると肺炎が起こりやすくなります。
他にも、様々な合併症が考えられ、骨折の連鎖を防ぐことは内科疾患を予防することにもつながることは自明です。
75歳以上は、運動器疾患による要介護状態への移行が最多
75歳未満と以上では、要介護状態の原因疾患が異なります。
運動器が関与する部分としては「関節疾患」・「転倒骨折」が挙げられます。
平均寿命が延伸し、健康寿命の延伸が問題になっている近年において、運動器疾患の予防も重要なテーマになってくることは自明です。
まとめ
医療者側の責任としては、骨粗鬆症をどこの段階で疑い、早期に捕まえて骨折予防を始められるか?というものが考えられます。
【重要】橈骨遠位端骨折で骨粗鬆症を
骨粗鬆症治療が生命予後にも関わることがわかっている以上、それを放置することは許されなくなってきます。
【衝撃】hip fractureと生命予後
ご高齢者の場合、常に、なぜ骨折したか?
何か、原因となる外的・内的因子がないか?を考え、再受傷を防ぐ必要があります。
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