紙出版の難しさをあらためて実感

私は、昨年の夏頃に「骨折の術前計画だけの本」という、出版社に出したら門前払いをくらいそうな本をセルフ出版しました。

1・2日のみだったと思いますが、amazon医学・薬学部門で1位を獲得していました。

そんな本も、だらだらと売れ続け、今では50冊以上売れています。

セルフ電子書籍出版をすぐに始めるべき理由 この数を多いととるか、少ないととるかはその人次第ですが、若手の整形外科医のみを対象とした本でこれだけ売れれば御の字です。

売り上げも、10万円を超えています。

ほぼ初期投資なしからのスタートですから、そのまま自分のポケットにお金が入っていると考えてもいいかもしれません。
(こんな言い方をすると、不真面目に捉えられるかもしれませんが、本の内容は、いたって真面目です。)

この本には、私も思い入れがあります。

整形外科医1年目から(正確には初期研修医2年目から)、自分に才能がないと気づいていた私は、とにかく恥を顧みずメモを取りまくっていました。

そのメモをノートにまとめたところ、実に30冊以上になりました。

いまでも、ノートは私の財産であり、誇りです。

これを生かし、多くの人にたくさんの人を救うきっかけとなってほしいと考えてセルフ出版しました。

なので、基礎研究や研修会に近いかもしれません。

セルフ出版は、自分が出会ったことがない若手にも自分の経験を伝え、自分がであったことがない患者さんも救うことができるかもしれない素晴らしいものであると考えています。

紙出版の難しさを改めて実感

私が骨折術前計画の本を作成しようと思ったのは、大学勤務時代に後輩に術前計画の重要性を教えていた時に、「何のツールをもちいて、術前計画のやり方を勉強したのか?」と聞かれた時に、その教材となる代表的なものが思い浮かばなかったことからです。

伝統的にただ、なんとなく教えられてきているものを、文字に起こして伝えるという作業をしてみたいと考えたのです。

google様に聞いてみても、すくなくとも出版されているものはなさそうでした。

すぐに文字に起こしてみたものの、骨折はその患者背景や骨折型・軟部状態など一つとして同じものはなく、一義的に語ることの難しさを感じました。

なので、各論的なものはやや省略して作成していきました。

ここで、一般的な紙出版と違うところは、

  • あとから修正が簡単
  • 初期投資が不要
  • 匿名出版である
ことでした。

もちろん紙媒体でも匿名ですることも可能ですが、電子出版であればさらになにものかわからなくすることも可能です。

この、なにものかわからない状態は、無責任というデメリットを生むこともあるかもしれませんが、他方思い切ったことをできる勇気になるとも考えられます。

私は、決して匿名だから適当にというつもりはありませんが、80%のできでも出版しよう!という気にはなれました。

その一方で、後から知ったのですが、骨折術前計画の本はクラウドファンディングで出版を試みている方がおられました。

外傷ではとても有名な関西医科大学附属病院 整形外科の「矢倉拓磨」先生です。

”1500例から厳選した骨折術前計画・作図集をつくりたい!”というタイトルですが、支援額8640円で、200冊目標というファンディングでした。

結果は大成功し、1,728,000円という巨額なお金を集めました。

それだけ質の高い本がなかった、多くの人が求めていた!ことがうかがえます。

しかし、当初は2018年の3月ごろの刊行を目指しておられたようですが、結局延期を繰り返し、2019年5月に返金となっています。 

やはり、医師は非常に忙しく、細かな執筆の時間がありません。さらに、完璧を求めるが故に結果出版に至らないというジレンマを抱えています。

実質返金されたわけですが、当然振込手数料も必要ですし、出版社との打ち合わせに要した料金も発生します。(この点は、契約形態にもよると思いますが、実際の出版にこぎつけた際にメージン請求されるのかもしれません。)

また、1年以上上1,728,000円ものお金をロックしていたとなると、お金の時間的な価値という意味合いでも損失があったと考えられますので、その点に対するネームや信用力に傷がつく可能性があります。

クラウドファンディングといえどもリスクは0ではないということですね。

結果として、私の本が日本で初(たぶん)と名乗り、著名な先生の出版予定の本が2番手となってしまいました。

発信源に対する信頼性は、圧倒的に低い電子書籍セルフ出版

しかし、セルフ出版にもかなりのデメリットがあります。

一つは、匿名だとさらにですが、「信頼性がない」という点です。

しかし、私の知っている紙媒体書籍出版をした医師も、出版社を通したにも関わらず、出版後に語彙力を問われるような内容だったりして、その質を問われることがありました。

医療業界は高度な専門性で成り立っているため、出版編集者でも目が届かないような細かな言葉の選び方を必要とされることがあります。

また、医師も論文を書いたり、人前でプレゼンすることが非常に多いため言葉に非常に敏感です。

その点では、将来的には電子書籍セルフ出版だから、、という見方ではなく、内容をみて評価してもらえるような時代が来るのかもしれません。

まとめ

信用性のある情報を発信することも大事ですが、医師を相手にした場合には、その内容が信用のあるものかどうか?をプロに委ねることもできます。

また、私の骨折術前計画という着眼点は、時代によって変革していく医学の中でも、短期間では変容しにくい部分であるとも言え、大規模修繕の必要性が低いところにもなります。

みなさんも、自分の得意分野をアウトプットして、その第一人者になってみてはいかがでしょうか?


コメントをどうぞ


    メールアドレスが公開されることはありません。*印が付いているものは必須です。