【小児】見逃してはいけない小児の骨折〜すべての整形外科医が知るべき虐待の鑑別方法〜

お仕事整形外科医です。


日本整形外科学会総会(JOA)2020ネタです。


参考講演
見逃してはいけない小児の骨折
千葉こどもとおとなの整形外科 西須 孝

*2020年10月5日にこれに追記しました。b
参考文献
画像から児童虐待を疑う時
日本整形外科学会誌 2020 Vol94 539-542 平良 勝章ら

小児の骨折は何年目になっても自信をもって、「診れる!」と言えません。


小児は大人のミニチュア版ではなく年齢によって、個人によってバリアンスがかなりあります。


また、保護者からのプレッシャーももちろんありますので緊張する次第です。


上記講演を聞いて個人的に印象的だったものを抜粋します。

小児科の先生方ってすごいよな

本来、整形外科は英語表記で、「orthopaedics」。
小児を診ること基本だったんだけどね。






小児多発骨折を見た場合・虐待との鑑別

虐待は、小児骨折では常に疑わないといけないものです。


救急外来を学んでいたときには、「女性を見たら妊娠を考えろ」・「小児骨折を見たら虐待を考えろ」と言われたものです。


医師は、小児虐待に対しては、通告(通報)の義務があります。


これは、確証がなくても疑った時点での義務です。


児童虐待防止等に関する法律
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない
日本小児科学会HPより https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/abuse_2.pdf


しかし、保護者も自分から虐待をみとめてくる人ばかりではありません。


「抱っこしていたら落とした」
「ベッドから落ちた」
「気がついたら腫れてきた」


など、医療従事者が骨折を見たら全身を観察する癖をつけなくてはいけない部分があります。


一方で、小児には易骨折性をきたす基礎疾患が存在する場合があります。


その代表格の一つに骨形成不全症があります。


骨形成不全症
骨形成不全症(Osteogenesis imperfecta)は、全身の骨脆弱性による易骨折性や進行性の骨変形に加え、様々な程度の結合組織症状を示す先天性疾患である。発生頻度は約2~3万人に1人とされている。
難病情報センターHPより https://www.nanbyou.or.jp/entry/4568

臨床像が多彩で、大人になって偶発的に発見されるものが存在するくらい、見た目ではわかりにく病態です。


今回の講演では、頭部レントゲンでのwormian bone signをチェックする方法を紹介されていました。


wormian bone signの画像についてはこちら


このサインが陽性だと骨形成不全症の可能性があり、虐待の疑いは低くなるとのことでした。


逆に多発骨折があり、本サインが陰性だと虐待の可能性を考慮する必要がありそうです。


ただし、wormian bone sign自体単純X線像を用いた研究では、典型的な画像は50%以下にしか確認されなかったという報告もあり、非典型的なものを含めても69%にしか見られなかったようで、特に生後4ヶ月未満では、wormian bone signが観察されにくいようです。

参考文献
骨形成不全症におけるwormian boneの合併頻度および年齢との関係
平成8年厚生労働省心身障害研究より https://www.niph.go.jp/wadai/mhlw/1997/h091056.pdf

(追記)画像から考える虐待の可能性

2歳未満の疑わしい症例に対しては被曝の面を考慮しても全身の検索は許容されると明言されています。

著者の先生のご所属であります、埼玉県小児医療センターであ、頭部CT(必要に応じてMRI)、レントゲンは頭部2方向、体幹部正面、肋骨両射位、上肢・下肢全長、手部足部撮影を行っておられるようです。

また、症例に応じて腹部CT、腹部エコー

さらに、眼科の先生による眼底検査も行われているとのことでした。


虐待の可能性が高い骨折として、

  • 肋骨骨折
  • 骨幹端骨折
  • 棘突起骨折・手足の短骨骨折・肩甲骨骨折

をあげておられます。

棘突起骨折・手足の短骨骨折・肩甲骨骨折は、頻度は低いようですが、骨折を見た場合には、虐待の可能性が高いという、「特異度が高い」という特徴があるようです。

また、肋骨骨折の場合には、椎体近くの肋骨頭近くの骨折は虐待との関連が高い。一方で、心肺蘇生などの前方からの圧迫による骨折は前方と側方に生じやすいという特徴があり、鑑別に一助となるようです。

まとめ

小児の虐待を発見する上で医療現場は重要な役割を担います。


もちろんそういった症例がないことがベストですが、新型コロナウイルス感染症が流行する昨今では、家庭内暴力の増加が問題視されています。


今後も、そういった目を持ちながら診療に臨む必要があります。



ちなみに、ちょいネタ

足関節捻挫

同じ講演で、面白いものを見ました。

小児大人問わず、足関節捻挫は非常に腫れが強く足もつけないものから、あっけらかんとされている症例まで重症度に幅があります。


小児の場合は、腫脹が強い場合腓骨の剥離骨折を疑う必要があり、近年はエコーで検出されることもあるようですが、体が小さく検査中じっとしていられなかったりすると描出できない可能性もあります。


特殊なレントゲン撮影を指示することもありますが、その頻度の少なさから同じように伝えたとしても技師さんによって、取れてくる写真にばらつきが出るのが現実のようです。


足関節の正面像を取るようにフィルム・体位をセットして、頭側45度から放射線を入射させるように指示すれば、上手に取れてくることが多いようです。


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