以前、続発性骨粗鬆症の鑑別の記事を書きました。
【重要】これだけはおさえるべき。続発性骨粗鬆症の鑑別
今回はそのアプデです。
そもそも、結果として骨粗鬆症になるなら鑑別診断いらなのでは?と思われる方もおられるかもしれませんが、
- 原因を治療しないと改善しない
- 原因疾患によって引き起こされる別の病気も治療が必要
- ものによっては、骨粗鬆症の治療方法を考える必要がある
といったところが、ポイントです。
なかでも、低骨代謝回転の疾患にBP製剤やデノスマブを使用することは状況を悪化させることにつながります。
余計に骨代謝回転が低下しちゃうよね
非定型骨折の原因になりうるぞ
そもそも、閉経後骨粗鬆症は高骨代謝回転か、低骨代謝回転か知ってるか???
あ”あ”??????
勢いで逃げるタイプか・・
まとめ
- 採血項目はコレ
- 注目すべき身体所見
- 必要な問診
採血項目
こちらは、最低限の項目となっています。 もちろん、これに既往症、問診、身体所見を加えて、必要項目は増加していきます。- Ca
- Alb
- P
- ALP
- CRP
- 血糖
- 肝機能
- 腎機能
CRPは関節リウマチなど慢性炎症疾患を鑑別にあげます。
血糖は糖尿病やクッシング症候群(もちろん一回の計測で診断できるものではありませんが・・・)、肝機能は肝硬変などの重篤な肝障害の鑑別(こちらも必ずしも・・・的な要素はありますが)、腎機能からは二次性副甲状腺機能亢進症なども疑われます。
のこりの①から④についてもうすこし詳しく説明します。
Ca、Alb、P、ALPについて
これらの項目は、低骨代謝回転異常を鑑別するためにも非常に重要な項目を含んでいます。
(これからお話しする内容は腎機能がeGFR≧45が前提です。)
まず、ALPが基準値内低値以下(<45U/L)の人は低ホスファターゼ症を疑います。
そのままだな
うん、そのままだ。でも整形外科医にはわからないから、この場合は内科に相談や。
なんか、ほんとスイマセン。
ALP高値かつ、補正Caが低い場合にはVitD欠乏症・依存症、FGF23関連疾患、ファンコニー症候群を疑います。
低P血症がある場合には、まずFGF23関連疾患。つぎに、ファンコニー症候群、ビタミンD欠乏症を考慮します。
(血中FGF23は現在、保険適応となっています)
ちなみに、ビタミンD欠乏症は日本人での有病率が非常に高いため、あったとしてもFGF23関連疾患やファンコニー症候群との合併がありうるため注意が必要です。
この部分は、フローチャートシステムにしています。こちらを参照してください。
もう、、、、無理ぽ。。。
ここが、骨粗鬆症を診断できるかどうかの分かれ目や。がんばりや・・。
これで、診断がつかない場合でも、
- 閉経前女性 妊婦。授乳婦
- 男性70-75歳未満
- 高骨密度
- 比較的若年の多発椎体骨折 (BMD<YAM 60% グレード3の椎体骨折)のような重症例
が、みられる場合には、骨形成不全症・性腺異常性(ターナー症候群やクラインフェルター症候群)、マルファン症候群、骨大理石病などを考えます。
ここまでくると、流石に俺でも総合病院の内科の先生に紹介だな・・・。
他の採血によるチェック項目
あとは、計測しやすい採血項目としては、
- TSH、FreeT4
- HbA1C
あたりは、整形外科医でも比較的取りやすい項目なのではないでしょうか?
上記の2つは糖尿病と甲状腺機能亢進症を鑑別するための採血です。
さらに、治療という意味では、骨形成マーカー(P1NPなど)、骨吸収マーカー(5TRACP)など、iPTH、25OHVitDは計測してもいいかもしれません。
VitDを見れば、ビタミンD欠乏症の有無はわかるけど、VitD欠乏は日本人には非常に多いから、これがあるからといって、他に原因がないと言い切ることはできないところが注意点です!!!
iPTHは腎不全がある場合に、PTH製剤を使用するかどうかに関わってきます。もしiPTHが高値であれば、PTH製剤は使用を控えた方がいいみたいだぞ。
性腺機能関連や閉経、不妊の聴取
問診として閉経について聞くことは多いかと思います。
閉経前の骨粗鬆症であれば、潜在的に続発性骨粗鬆症をきたす疾患を疑います。
さらに、もう一歩踏み込んで性腺機能の発達についても問診しましょう。
- 恥毛や腋窩毛
- 不妊
- 外性器・ヒゲなどの二次性徴発達など
さらに、身体初見としてもターナー症候群では、外反肘、頸部背面の毛髪線低位,眼瞼下垂,多発性の色素性母斑,第4中手骨および中足骨の短縮などがあります。
クラインフェルター症候群では高身長・やせ型・なで肩・長い手足などがあります。
マルファン症候群では高身長・細く長い指・漏斗胸・側弯などが挙げられます
尿検査
ここからは、以前書いた記事と同じです。
【重要】これだけはおさえるべき。続発性骨粗鬆症の鑑別
尿検査
- 尿糖
- 尿蛋白
- 生化学(高カルシウム尿症・リン排泄上昇 )
尿糖はそのまんま糖尿病を疑います。
近年、糖尿病は生活習慣病性関連の骨粗鬆症の一つとして疾患概念がやや変わりつつあります。
尿蛋白は、重要な鑑別である多発性骨髄腫を鑑別します。高カルシウム尿症は原発性幅甲状腺機能亢進症などを鑑別します。
リンの排泄上昇はFGF23関連低リン血症と鉄剤の静脈投与を疑います。
FGF23関連低リン血症は私もカンファレンスで一度見たことがあるだけですが、若年の骨折を契機に判明した方でした。この疾患を疑った場合には、大きな医療機関で扱った方がいい疾患ですので、手に負えない場合は早期に送るべきです。
薬剤性の鑑別
ステロイド性骨粗鬆症は非常に有名かと思いますがそのほかにも、抗けいれん薬やワーファリン、性ホルモン低下療法治療薬、SSRI、MTX、ヘパリンなども薬剤性骨粗鬆症として鑑別が必要になります。
SSRIは近年整形外科医も処方することが出てきましたので注意が必要です。
また、ワーファリン内服者も高齢者の増加に伴い増えてきています。
疑っても、内服する必要のある原疾患の治療や予防として、継続が必要な場合には継続することになります。
生活習慣の聴取
先程ちらっと述べましたが、生活習慣病関連の骨粗鬆症も近年注目されています。
具体的には、
- 糖尿病
- COPD
- アルコール
が、挙げられます。
高齢男性の骨粗鬆症患者さんの場合、これらの生活習慣是正が必要な場合も多く、注意深く聴取する必要があります。
採血項目だけまとめ
採血項目
- Ca
- Alb
- P
- ALP
- CRP
- 血糖
- 肝機能
- 腎機能
- TSH、FreeT4
- HbA1C
付け足し
実は、ここまででは、Cushing症候群が拾いきれてない・・・。
特異的な症候としては
- 満月様顔貌
- 中心性肥満または水牛様脂肪沈着
- 皮膚の伸展性赤紫色皮膚線条(幅1 cm以上)
- 皮膚のひ薄化および皮下溢血
- 近位筋萎縮による筋力低下
- 小児における肥満をともなった成長遅延
上記の中でも比較的感度が高いのが前腕屈曲側の皮膚を摘んで菲薄化をみる、中心性肥満をチェックすることのようです。
また、非特異的症候としては、
- 高血圧
- 月経異常
- 座瘡(にきび)
- 多毛
- 浮腫
- 耐糖能異常
- 色素沈着
- 精神異常
これ以上は、もう内科の先生にパスしたほうがいいやろな
Cushing症候群についての参考文献
日内会誌103:832~840,2014
どれも秀逸ですから、ご自身で一見して診療に活かしていただくようにお願いします!
続発性骨粗鬆症についての参考文献
骨粗鬆症学会雑誌 Vol.7 No.1 2021
Hagino H ,et al Calcif Tissue Int 90 : 14-21,2012
整形外科・災害外科 64 1309- 1316 2021
骨粗鬆症学会2021 骨粗鬆症診療ブラッシュアップセミナー3
Hagino H ,et al Calcif Tissue Int 90 : 14-21,2012
整形外科・災害外科 64 1309- 1316 2021
骨粗鬆症学会2021 骨粗鬆症診療ブラッシュアップセミナー3
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