”再生医療”は近年、注目のワードです。
整形外科領域でも、変形性関節症に対する治療としての再生医療は「夢の医療」といえます。
一方、「外科医は、手術テクニックの鍛錬をしていても、将来手術がなくなるのではないか?」という懸念をお話しされる若者がおられます。
変形性関節症の分野で、もっとも軟骨再生に近いのは、最大の関節である膝関節ではないかと思います。
股関節も大関節ではありますが、関節切開にともない骨頭壊死のリスクが0ではありません。
アプローチ法などでかなり防げることがわかっていますが、リスクベネフィットが合わないと考えられます。
膝関節は、関節切開しても壊死することはなく、日本の企業「FUJIFILM」は軟骨培養シートの開発を手がけるなどまずは膝関節分野での軟骨再生が実現可能なのではないかと考えます。
自家培養軟骨ジャック
自家培養軟骨ジャックは、初めて保険適応された軟骨再生医療として注目を集めました。
患者さんの軟骨を採取し、4週間培養してシート状にして戻すというもの。
軟骨シートは、自家細胞であり免疫反応の可能性が極めて低いことからも、「夢の医療」とされていました。
しかし、適応疾患が外傷性の軟骨損傷であることから、加齢性変化である変形性関節症には適応外とされていました。
さらに、術者の2回手術をするという煩わしさ、モザイクプラスティーも良好な成績をだしていたことから、医療者側の興味という部分を超えて適応とされる人が少ないのではないかと考えていました。
最近になって、そのほかにも、移植分の肥大と骨化が生じてしまうという、問題点も指摘されております。
この弱点は若年に大いうという致命的なものです。
そもそも外傷性軟骨損傷で、自家培養移植をやるメリットは若年にあると漢学れるのに、若年がリスクなんて本末転倒すぎます。
すでに、適応がどこにあるのかわかりません。
最近適応となったコラーゲン膜は、このような合併症はないようですが、再生医療とは言えなさそうです。
本当に膝関節の手術はなくなるか?
個人的には、この答えは「まだまだ当分は、なくならない」と思います。
まず、第1点に、軟骨培養では、軟骨シート作成ができても、軟骨採取・軟骨シート移植の手術が必要です。
手術がなくなるか?どうか?という論点に絞ると、注射などで軟骨が再生する必要がありますので、まだ技術的には遠いと考えられます。
2点目に、膝関節は、ある程度病期が進行するまで症状がでません。
病期が進行すると、症状がでますが、その頃にはアライメント異常やthrust(不安定性)が出ています。
いくら軟骨を再生できても、これらの構造的な異常があればすぐにすり減っていきます。
なので、すくなくとも骨きりは残っていくと思います。
では、病期が浅いうちに軟骨治療を開始すればいいという意見もあるかもしれませんが、病期が浅いと症状がないため、その治療にのってくる患者さんも少ないのではないか?とおもいます。
そもそも、自然経過がはっきりしない変形性膝関節症を早期につかまえて、
「あなた、今は症状ないけど将来的に(期間は不明)軟骨すり減って痛くなるかもしれないから(頻度不明・誘引は多因子)、軟骨再生の治療(高額)を受けた方がいいよ」
というのは、受け入れられないのではないでしょうか?
まとめ
軟骨再生・手術のない治療はまだ、「夢」の治療です。
日頃より尽力されている方を決して批判するわけではなく、記事が批判的な文面になってしまっていることについては、大変申し訳なく感じます。
このような、技術革新を支えていける社会であってほしいと思います。
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