お仕事整形外科医です。
先に言いますが、コロナ関連のことを指して言うてるのではありません。
もちろん、なんとなく意識をせざるを得ない状況ではありますが、もともと患者さんから「検査検査」言われることにゲンナリ来ていたので、その点についての雑感です。
お仕事整形外科医
診断学は、検査のみを100%信頼するものではありません。
患者さん背景や自覚初見・他覚初見などを踏まえての診断になります。
検査の必要性の判断と診断
そもそも検査は、患者背景(年齢性別など)や自覚症状・他覚所見・検査のメリット・デメリット(検査の侵襲や費用など)、検査精度などを総合的に適応を「判断」しています。
必要のない検査をすることは、研修医のころから「害悪」とされ、教え込まれています。
そもそも必要のない検査で患者さんの健康被害を生じてしまうなど目も当てられません。
また、検査をすることで治療方針に大きな影響を与えうるのか?
さらに、検査が陽性でも、患者さんの自覚所見や他覚所見と合わない場合には、診断はできません。
やれ検査が検査が、、というが、それをやるかどうかの判断や、結果を受けての判断は、「検査キット」にはできない部分です。
診断学は疫学も必要
診断を的確に、迅速に行うには疫学の知識も必要です。
先ほど記載したように、好発年齢や性別が合わないなどの場合には、そもそも検査が必要なのか?を考える必要があります。
例えば、「咳」という症状一つをとっても、風邪かもしれないし、頻度は低くても生命を脅かす病気かもしれません。
しかし、はじめから全員に、頻度の低い生命を脅かす病気を疑い侵襲を伴う検査を行うことはせずに、まずは問診を重ね、身体初見をとり、侵襲の少ない検査から行なっていくことになります。
また、「経過観察」も非常に重要な診断ツールであり時系列での変化で疑う病気は変化します。
この点を理解してもらう必要があります。
まとめ
繰り返しになりますが、これはコロナについての文言ではありません。
メディアで頻度の低いが、怖い病気を不安を煽るように伝えるたびに、このような説明をする機会があるようにも思います。
ですが、この情報によって、実際に受診行動に繋がり救われた命もあるようです。
なので、受診行動にうつすきっかけには、なってもいいかもしれませんが、「検査をしないからダメな医者」と一概に決めつけるのは、間違いであると思います。
一方で、医師は自身の判断に誤りが生じる可能性が常にあることを念頭におくべきです。
その上で傲慢にならず、検査結果や周囲の声に耳を傾けるべきです。
また、患者さんは医療的な事実を伝えるだけでは、かならずしも「不安」は解消されません。
解消されない「不安」は、医療者側が耳を疑うような情報を患者さんが信じ、行動を誘発することがあります。
そうならないためにも、患者さんの感情にも気をくばり、また、周囲のスタッフにこの点を支えてもらっていることに感謝する気持ちを持つことが大切であると思います。