膝関節周囲骨切りにおけるJLCAの扱い

2019年11月のmonthly orthopaedicsにとても興味深いものがありました。


膝関節周囲の骨切り、特に内反膝へのHTOをしていると非常に強く感じる疑問点にJLCAの扱いがあります。


JLCAはjoint line convergency angleの略語であり、要するに膝関節の傾斜角度のことです。


内反膝では、内反JLCAは強くなっていきます。(内側傾斜が強くなります)


骨切りは、術後に荷重線がどこを通るかが非常に重視されますが、骨性に狙ったどおりに切っても、術後の内側の軟部弛緩によりJLCAが大きく外反側に矯正され荷重軸で過矯正に陥るリスクがありました。


また、逆にJLCAの術後変化に期待を持ちすぎて過小矯正になったりなど、その”動きの読めなさ”にに苦労していました。

引用文献
monthly orthop 2019 11月 Vol32, No.11 p15-22 ,小川ら

内反ストレス下JLCAを指標とした考察

まずは、JLCAを考慮すべきかどうかの検討から入ります。


術後の荷重軸を通して、骨性にのみ矯正した場合にMPTA(medial proximal tibia angle)が何度になるかによって決めます。95度以下の症例は軟部組織の影響を考慮する必要はないというのが、ポイントです。


たしかに、感覚的にもMTPAが浅い症例はそれほど荷重時に関節にかかるshare stressが大きくないため、JLCAが外反方向に行きにくいというイメージは湧きます。


次に、MPTAが95度以上になる場合には、術前の内反ストレス下JLCAの40%が軟部組織による外反矯正予想角度になるというそうです。個人的には非常に画期的な発見で、興味をそそられます。


ですので、軟部組織矯正がかかる分、骨性矯正は少なく見積もる必要があります。

適応外にも注意

下記は適応外です。

  1. 術後MPTA≦90度
  2. 術前外反ストレスしたJLCA<0度
  3. KL分類 grade 1 or 2
  4. 内側コンパートメントの著しい骨棘
  5. 屈曲拘縮15度

1は、そもそも変形中心が脛骨近位なのか?という問題です。


2は、内反拘縮が強すぎる症例で、矯正しても動かない場合を指しています。ですが、骨棘を徹底的にとって、MCL浅層を剥離して術中に外反ストレスでJLCA0度まで戻せた場合はどうなるんだろう?という疑問は湧きました。


3も4も2に近い理由であろうと思います。


5はそもそもHTOの適応ではありません。

まとめ

この論文は、今後も検証がされていくと思いますが、もし正しいと判断され続ければ非常に画期的な発見と言えます。


今後の流れにも注目していきたいものです。


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