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【重要】大腿骨近位部骨折手術前に抗血栓薬休薬の必要性はあるか?

ご高齢の大腿骨近位部骨折(転子部・頚部骨折)の患者さんは、かなり高い確率で抗血栓薬の内服をされています。

一昔前であれば、抗血栓薬の効果が切れるまで休薬期間を設け、その後手術加療するというのが常識でした。

しかし、休薬期間中に廃用が進むこと・誤嚥性肺炎などの合併症をおこされ、手術加療自体ができなくなることなどの背景がありその見直しがここ10年くらいでどんどん進んでいます。

大腿骨近位部骨折の手術タイミング

大腿骨近位部骨折については手術を受傷後早期に行った方が退院までの期間・残存ADL・生命予後の点からも有利であることは言われています。

24時間以内や48時間以内など様々な研究がされていますが、実臨床では病院の体制や周囲のスタッフ・他科の医師の協力状況により変わってくるのが現状です。

確かに、早ければ肺炎になる前に手術がおわり、すくなくとも座位をたもって食事ができるようになるため(端座位まではいかなくても、ギャッジアップした時の疼痛が緩和され、体を起こして食事が取れるようになります)、非常に有利です。

“ベッド上安静は、2日間で1年間の筋力低下に相当する”とも言われており、その害悪は重視されています。

抗血栓薬と大腿骨近位部骨折

元来、休薬期間を設けていた理由は、手術中に血が止まらなくなり、出血量が増えてしまうことへの懸念でした。

しかし、大腿骨近位部骨折は、手術的に骨折部を安定化させないと、骨からの出血が持続します。

この点で、抗血栓薬の休薬期間中にも出血が持続しやすいため、早期に手術を行って術中に出血するのとそれほど総合した出血量がかわらないのではないか?という議論が出ました。

実際に、輸血の必要性などを調査すると、休薬期間を設けても設けなくても輸血の頻度に差はなく、だったら廃用などの悪影響を考慮し、早期に手術したら?っという流れになっています。

しかし、この流れになった後にも、クロピドグレル(プラビックス)については意見が分かれていました。

クロピドグレルは、抗血栓作用が強く休薬期間が2週間と長いという特徴があります。

私が勤務していた病院の麻酔科の先生も、挿管時の咽頭出血が持続することなどを懸念し、全身麻酔でも嫌がられるという状態でした。(だったら、ラリマスとかあるやろっ。そもそも挿管時に出血させること前提かいっていうツッコミはなしとして)

しかし、最近クロピドグレルであっても、早めにやった方がええやろという研究も出始めています。

参考文献
中部整形外科学会雑誌 2019 62 873-

また、抗血栓薬中止による、血栓症の懸念もあることからこのような研究がさらに進んで欲しいものです。

抗血栓薬と腰椎麻酔

高齢者の中には、麻酔法によって、特に全身麻酔だと手術するか迷ってしまうときがあります。

抗血栓薬使用中の腰椎麻酔の血腫形成頻度は、

“抗血栓薬使用中の患者における硬膜外麻酔後の血腫発生の頻度が 1:150,000 なのに対し,脊髄くも膜下麻酔 による頻度は 1:220,000”

という数値がよく引用されています。


一方、ガイドラインでは、

抗血栓療法中の区域麻酔神経ブロックガイドラインより引用
アスピリン単独使用中の患者に対する脊髄くも膜下麻酔を可とした.

これは,一般的な硬膜外麻酔後とアスピリン単独使用中の脊髄くも膜下麻酔後の血腫発生 の危険率が同等であるというデータに基づいている.

また,本邦の薬物の添付 文書と欧米の学会から発表されている指針の休薬期間に乖離がある場合もある.

表8(本記事では下図)に抗血栓療法を受けている患者に対する脊髄くも膜下麻酔の指針を示す
となっており、

このように、指針が出されています。

しかし、注意書きとして、

*上記推奨事項はあくまでも現存の資料等から考 察されたものであり,個別症例に対する適用では,症例ごとの特性に基づき個別に判断されるべきものである.

また、

*個々の症例で患者の状態に応じて脊髄くも膜下麻酔の必要性を検討することが重 要であり,施行する際には患者への十分な説明と術後の神経症状の監視が必要である.

と記載されているため、リスクベネフィットを相談した上での適応にはなりそうです。

まとめ

大腿骨近位部骨折の周術期にまつわる、抗血栓薬の取り扱いについては、個々の症例で非常に迷うところです。


ガイドラインを眺めても、休薬を必要とする薬剤があったりする一方で、個々の症例に応じて対応するしかなさそうです。


また、腰椎麻酔に関する血腫発生の頻度を”どう感じるか?”は人によって異なると思います。

ちなみに、

  1. 宝くじ1等に当たる確率・・1:10,000,000
  2. お年玉年賀ハガキ1等に当たる確率・・1:1,000,000
  3. 抗血栓薬使用中の患者における脊髄くも膜下麻酔 による頻度・・ 1:220,000
  4. 抗血栓薬使用中の患者における硬膜外麻酔後の血腫発生の頻度・・ 1:150,000
  5. 宝くじ3等に当たる確率・・1:100,000
  6. アマチュアのホールインワン・・1:33,000
  7. 裁判員に選ばれる確率・・1:5,000
  8. 交通事故にあう確率・・1:100
  9. ガリガリ君あたり確率・・1:25
この辺と比較してみるといいかもしれませんね。

だいたい、宝くじ3等にあたったことない人は、まず起きない(もちろん言い切れませんが)と言えるかもしれません。

骨折手術後早期のBP製剤介入に関する記事です。
骨折手術とBP製剤の早期使用・非定型骨折とBP製剤


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