お仕事整形外科医です。
hip-spine syndromeは、脊椎と股関節の両方に障害を抱えている人につけられた症候群です。
確かに日常診療をしていると、腰から臀部、仙腸関節部周囲に痛みがありながら、股関節にも荷重時痛が見られる症例があります。
実際の治療としては、例えばどちらかをブロックして全ての症状が取れればそちらから治療すればいいのかもしれませんが、なんとなく症状が残ってしまう人もいます。
また、股関節を先に人工関節にかえてから、腰椎の固定術をすると骨盤の傾斜がかわり、易脱臼性につながる例もあります。
今回、結論の出ない問題の出所を探るべく、論文検索しました。
そもそも、hip-spine syndromeにTHAを行うとどうなる?
成人脊柱変形の程度にもよるとは思いますが、骨盤後傾があると前方脱臼の危険性が高まります。
そもそも、正常股関節もそうですが、後方の方が被覆がよく、THAの割賦設置の際にも前方を開いて設置します。
骨盤後傾があると前方の被覆が設置した任意の角度よりも、座位や立位時にさらに低下し、前方脱臼をきたす可能性が上がります。
脊椎の変形がある症例にとりわけ側臥位の体位でのカップ設置は、実際の生活時にとる姿勢の骨盤傾斜と異なるなど、手術における留意点が多くなります。
報告によると、成人脊椎変形を有する症例へのTHAは、脱臼RRが1.51、脱臼8%、再置換5.7%とも言われています。
hip-spine syndromeの治療は脊椎固定・THAどちらから行うべき?
先に脊椎を固定してしまうところでカップの設置位置を決めやすくなります。
一方で、脊椎固定後のTHAは脱臼率7倍、再置換率4倍とも言われています。
さらに、固定範囲が広がれば広がるほど、その合併症が増加するようです。
逆に、THAを先に行なった場合にも、固定範囲が長くなるほど脱臼・再置換は増加するともいわれています。
まとめ
結局結論は出ません。
現在は、施設によって基準が異なるような印象を受けます。
以前、脊椎の先生がお話しされていましたが、”椎体疾患の場合、変形が生じていても、mobilityのある人工物に置換することはできず、事実上の関節固定しかできない”ところが、脊椎疾患の治療の難しさだと、実感します。
やはり体の関節は全て連関しており、どこかを固定するとどこかに無理が来てしまうのですね。
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