臨床医の大半がしていると思われる、当直と拘束。
お仕事整形外科医も、初期臨床医の頃からかなりたくさんこなしていました。
初期研修医・整形外科医2年目くらいまでは、当直がないと基本給だけでは医者と言えるだけの給料をもらえないような状況で仕事をしていました。今でこそ働き方改革と言われていますが初期研修医の当初はひどいもので、救急当直でほとんどねれなくても、翌日日勤があるというのもざらでした。
整形外科医になって2年間所属していた市中病院でも、当直中に受診しにきた患者は、全員担当医になるというシステムで、週末に五人患者さんが増えた経験があります。
大晦日に、①大腿骨転子部骨折の手術症例が来たと思ったら、すぐに②両下腿の開放骨折がきて、先に②の開放骨折の髄内釘を行うことになり、片方の髄内釘を終えたところで、手術室で術着をきたまま年越し、反対側を年明けにやる。そして、翌、元日に①大腿骨転子部骨折を昼からやるという悲惨な日々を送っていたのも、今ではいい思い出です。
その後、大学院に進学中も臨床を片手間にやりながら、研究をしていました。
外傷を得意としていたため、当直以外も、ほとんど24時間拘束状態。
そんな感じで、過ごしてきましたがある年、当直を辞めることにしました。
その後、拘束もやめ、現在はある施設の拘束を週に1日のみこなしています。(コールが来たことは今までありません)
当直・拘束に対する疑問
当直・拘束は仕事量や精神的苦痛に対して、給料形態が全くあっていないように感じます。
医学界での常識的な範囲というものも、あまり存在していないようです。
- 電話相談だけなら無料
- 病院に出動して対応しても、決まった時間を境に、給料があがらなかった(1時間以上か?未満か?のみで、手術の有無も関係なし)
- 外傷班にばかり負担がくる仕組み
以前、テレビで医師の働き方改革として、スマホで画像や相談を送り、家に居ながらにして、現場の人に返事ができて、職場に行かなくていいから最高!なんてものを見かけました。
これは非常に違和感を感じており、家にいても、仕事脳になった時点でストレスです。しかも、責任の所在がこちらにくるのであれば、むしろ自分で見た方が楽です、本当の働き方改革とは程遠い状況です。
2つ目は、病院によって違うと思います。以前まで勤めていた病院では、内科の緊急のない科の医師が、緊急がある外科系や循環器内科消化器内科の医師が給料優遇されることを嫌い、手術のフィーを反対したというつまらない理由で、このような決まりになっていました。
まさに、平等を主張する人が不平等を生んでいるという世の中です。
3つ目は、緊急疾患が圧倒的に多い、外傷班にのみ負担がくるシステムであることが問題でした。
他のグループの人間がそれを助け合う姿勢は少なく、若手もそれを見て外傷の道を選ばないという悪循環を生み出していました。そのくせ、他のグループは予定手術がおおいため、先に手術が終わったらご帰宅。外傷班のみ夜中までお残りというのが通常でした。
当直・拘束をやめると広がる世界
当直をやめると、まずは体に余裕が出ました。
年齢を重ねると、当直明けは少しずつしんどくなり、明けの夕方が一番眠く、むしろ家に帰ると疲れすぎてねれなくなるという悪循環が出始めました。
また、拘束も、家族ができると子供と過ごしている最中に平気で電話がかかってくることに不満を覚えるようになったこと、なぜ自分だけが?しかも、電話相談だけとは言え、無給で?と疑問を感じ始めました。
自分の価値観
価値観とは、自分の大切なものにある程度の順位づけをすることだと考えています。
私は、時間・家族を第1と考え、給料はその次であるため、「当直がなくなったら給料が減る」というのは、当直をなくす上で全くネックになりませんでした。
そのためにも、ある程度、無駄な浪費を削る必要はあります。しかし、一般的な家庭の生活は十分可能です。
私たち医師は一般的なサラリーマンと比較して給料水準が高いことは間違いありません。単位時間当たりの給料はかなりいい方だと思います。その上で、お金をとるか?時間をとるかはその人の価値観だと思います。
一方で、医師は社会的役割があり、そのために当直が必要になることもあります。もちろん私も、その使命感を否定するわけでは決してありません。しかし、私の場合は優先順位として当直で感じる使命感よりも、家庭での自分の役割の方が今のライフステージでは大切であると判断し、現在の状況に至っています。
まとめ
誰にでも、平等に流れていくものは時間です。
お金は、給料が上がれば上がるほど、税金が高くなり、単位時間あたりの手残りはすくなくなり、誰かのために働いているというウエイトが大きくなります。そうなると、稼ぎが少ない人のために働いているという、不平等意識が徐々に大きくなるというのも事実です。
もちろん、私たちは、納税し共助に活かしてもらうという社会的な役割もあります。しかし、一般的なサラリーマンの給与水準よりもいい時点である程度、社会人としての役割も果たしているとも考えられます。
そう考えると、もっと大切な人との時間を大切にしたいと感じてしまいます。
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