お仕事整形外科医です。
腰痛診療のアップデートです。
腰痛の主訴自体は非常に多いわりに、キレのある診断ができずに困ることがあります。
その度に「腰痛ってそのほとんどが原因不明なんだぜ!」って教わった記憶を思い出します。
実際患者さんにも同様に説明したことがあり、自分のなかでもモヤモヤした部分がありました。
今回、またしてもJOA2020で非特異的腰痛に関する知識のアップデートがあり(自分のなかで)記事にしました。
参考
JOA2020 「非特異的腰痛」再考
札幌医大整形 山下 敏彦先生のご発表
控えめに言って、JOA2020のオンライン開催最高なんだけど・・・。
ずっとこれでいい!
でもたまにはライブ感も欲しいからハイブリッド開催でいかがでしょう??
でもたまにはライブ感も欲しいからハイブリッド開催でいかがでしょう??
まとめ
- 実は、だれも「腰痛の8割は診断不可能」なんて言うてない!?
- 「腰痛の8割」は、実は違う話
- 整形外科医なら腰痛の8割はわからんは通用しなくなる!?
実は、だれも「非特異的腰痛=原因不明の腰痛」とは言ってない!?
山下先生の御発表では、そもそも非特異的腰痛の引用元とされるDeyo先生は、整形外科医ではなく家庭医だそうです。
専門医におくる必要がある腰痛を鑑別することが家庭の先生の考え方であり、それ以外の「心配ない腰痛はどれくらいの割合か?を調べ、その結果が85%であった」というのが、引用元となる論文の趣旨ではないか?というお話です。
さらに発表の中では、Yamaguchi Low Back Pain Studyを取りあげ、その結果を紹介されておられます。
Yamaguchi Low Back Pain Study
参考文献
Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study
PLoS One. 2016 Aug 22;11(8)
PLoS One. 2016 Aug 22;11(8)
こちらも腰痛の原因がどれくらい特定できるか(診断率)という部分に着目しています。
内容としては、レントゲン検査・神経学的所見・身体検査のための共通のツールを用いた診察にてどのくらい診断可能か?
確定診断としてファセットブロックなどの注射を行い診断の整合性評価を行ったようです。(ちょっと、この部分がわかりにくく、診断に用いたのか?診断の整合性をとるのに用いたのか?が、私の読解力ではっきりしませんでした。おそらく、整合性のために注射したものと考えています)
結果としては、
- 8割(78.1%)近くが診断可能
- 「診断不能」と「診断可能であったが深刻な腰痛ではない腰痛」を合わせると8割くらい
ここでの「深刻な腰痛」は、腰椎圧迫骨折、脊椎腫瘍、腰椎椎椎間板ヘルニア、感染、腰椎狭窄症、強直性脊椎関節症、内臓疾患を含んでいます。
この結果を受けてJOA2020のご発表では、そもそも家庭医のDeyo先生は、専門医に送らないといけないような「深刻な腰痛」は2割で、のこり8割はプライマリーで確定診断はつかなくても、経過をみていけるものとして、表現したものが「8割は診断できない」と広く受け入れられるものになったのではないか?と推察されておられました。
また、日本では腰痛のほとんどの患者さんを整形外科医が初診で見るため、深刻な腰痛を含め、8割近い腰痛が診断可能ではないか?とのことでした。
まとめ
家庭医が診断できなくとも、整形外科医が鑑別できる腰痛として、筋筋膜性腰痛・椎間関節腰痛・椎間板性腰痛・仙腸関節腰痛が挙げられていました。(先ほど述べた、深刻な腰痛を除く)
画像引用
Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Studyより
個人的には正確に、筋筋膜性腰痛・椎間関節腰痛・椎間板性腰痛・仙腸関節腰痛を鑑別・診断できるかは正直不安がありますが・・・。
いずれにしても今後、「腰痛は8割診断不可能!!」は通用しなくなってくるようです。
新着記事
【ポータブル電源】家族持ちなら即購入?ただし購入体験は最悪。 【買い!】echo show15の半年使用後レビュー 【保存版】顎骨壊死を懸念してビスホスホネート製剤の予防的休薬は不要!?コメントをどうぞ