お仕事整形外科医です。
整形外科ネタです。
たまに話さないと偽医者疑惑が出ますので、定期的に出していこうとおもいます。
内側半月板後角断裂の手術治療
内側半月板後角断裂は内側型変形性膝関節症(面倒なので、以下OA)や大腿骨内顆骨壊死(面倒なので、以下ON)を引き起こす原因疾患として近年注目されています。
もともと、初期OAをどう診断するか?という流れの中で注目されてきた病態かと考えます。
内側半月板は荷重時にそのストレスとhoop状に分散することで軟骨どおしの接触圧を低減しているいわばクッションのような役割をしていると考えられており、その後角断裂はクッション成分の破綻を意味し、OAやONに進行するという理論です。
そのため、「内側半月板後角断裂は早めに縫合・修復をしてhoop機能を取り戻そう」という風潮が見られています。
実際に私の周囲でも診断されて手術加療されている方も散見されています。
内側半月板後角断裂手術成績は?
後角断裂はpull outにて付着部にre-touch・縫合して修復という流れのようですが、再建後もMRIや関節鏡の観察研究で逸脱の改善やhoop機能の改善が見られなかったという報告もあり、ある程度の限界が潜んでいるように感じます。
もちろん、アライメントの問題など多因子ではあると思いますが、個人的には、正直パッとしない印象があります。
内側半月板後角断裂の手術適応は?
こうなると、手術適応をどこにするかという問題があります。
これを考察する際に問題となるのは、
- 内側半月板後角断裂症例のうち、OAやONへの進行が全例では無い
- OAになっても痛くない人もいる
- 痛くなってからの骨切りや人工関節も成績がいい
という点です。
1について、今回参考にさせてもらった論文では、20例の内側半月板後角損傷症例の自然経過において前向き検討で25%にON、40%にKL分類で2段階以上のOA進行という結果でした。
また、SONK・OAの発生にはそれぞれ平均2ヶ月・4.7ヶ月を要したようです。
逆に内側半月板後角断裂後に「不変」が35%存在したというのも面白い結果です。
全体の経過観察期間は19.4ヶ月と1年半ほどです。
これを長いと取るか、短いと取るかですが、短期でOAやONになるから、手術を早めにしようぜ!という意見を考察するには十分な長さ青かと思います。
さて、2・3も含めて考えますと、個人的には、まだ長期的な自然経過も手術成績もわからない後角修復の手術適応を拡大するのには、慎重派です。
断裂があっても十分な保存治療をして、画像的に進行しかつ、痛みがあれば骨切りか人工関節のほうがまだ優勢かな?と思います。
追記です。
JOA2020にて岡山大学の古松 毅之先生がご発表されているスライドの中に、MMPRTのやく97%が5年以内にTKAが必要になったという論文が引用されていました。
Mayoクリニックの先生である、Krych AJらの論文引用でしたがアメリカは日本の手術適応とやや異なる点があるため、すべて日本人にも当てはまるかは不明です。
また、発表者の古松 毅之先生はかなり積極的にMMPRTsを手術的に治療されている先生でもあり、選択バイアスがややかかっている可能性もあるため、慎重に見ていく必要があります。
治療方針を示されたスライドの中には、Orthopedics Reviews 2015のBonasia DEらの報告も入っていました。
そちらには45歳未満であれば治療可能そうであれば、45歳未満は半月板のリペアとなっています(症状がなくても??)。
こちらも、平均寿命が延伸している日本で年齢の適応が適切か?症状なくてもやるのか?など疑問が残ります。
まとめ
この辺はまだ意見の分かれるところだとは思いますし、今後さらに研究が進めば変わってくる部分だと思います。
しかし、新しものが必ずしもいいものではなかったというこれまでの歴史を考えると、慎重派の意見もあってもいいと思います。
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